MITSUI MIRAI CHALLENGERS AUDITION

INTERVIEWスペシャルインタビュー

「究極の利他は利己に通ずる」 350周年を迎えた“人の三井”が、いま社会のために挑戦する若者を募る理由

江戸に三越越後屋を創業した商人、三井高利によって礎が築かれた三井グループは、2023年に350周年の節目を迎えました。その記念事業の一環として行われているのが、16 歳以上 31 歳未満の若者を対象とした「三井みらいチャレンジャーズオーディション」。「未来に向けた良き社会づくりに夢や目標を持ち、チャレンジする若者を発掘・支援する」というメッセージを掲げ、グループ25社でのサポートをも視野に入れた大型オーディションです。

三井グループとしても「未来に向けた挑戦」とも言えそうなこの企画。オーディションを通じて、三井グループはどのような「チャレンジャーズ」との出会いを求めているのか、そしてオーディションを通じて、社会に対してどのような貢献をしていきたいと考えているのか、その狙いを事務局の金井潤さんと、糠塚まりやさんにお聞きしました。

「人」を大事にしてきた三井グループだからこその企画

今回、オーディション企画を行うことになった経緯を教えてください。
金井:昔から「人の三井」と言われますように、私たち三井グループには、人を大事に育てながら、企業活動や社会活動を行うという風土が、昔から根付いています。今回、社会貢献として350周年記念事業を行おうとなったときにも、人の三井なのだから、人にフォーカスした、人を育てる取り組みで社会に恩返しをしたいよね、という話が自然に出てきました。それで今回の企画が立ち上がりました。
「人を大事にする」ことが、昔から変わらない伝統なんですね。
金井:三井グループの源流は、江戸時代に商人である三井高利が開業した「三井越後屋呉服店」です。高利は、当時から能力や才能のある人間をきちんと見極めて育てていくということを行い、事業を拡大していきました。京都にある三井家の菩提寺(真如堂)には越後屋で働いていた番頭さんや奉公人の戒名を彫り入れた総墓(供養塔)があり、そのことからも三井家が、いかに従業員である「人」を大事にしてきたかということがうかがい知れると思います。
「オーディション」という形式をとった理由はなんでしょうか。
糠塚:当初はオーディションではなく、「アワード」形式で、既に実績のある人から受賞者を選ばせていただくという方法も考えていたんです。しかし、社会的な評価のある方を表彰するアワード形式では、「人を育てていく」という要件は満たせません。最終的には、実績のない方でも参加しやすいオーディション形式を採用することになりました。

他者を幸せにしたいという気持ちが「成長」につながる

「事業・社会活動部門」「研究・留学部門」「カルチャー創造部門」と募集部門が分かれています。なぜ、この三部門になったのでしょうか。
金井:まず「事業・社会活動部門」ですが、私たち三井グループは今回のオーディションを通じて、若い人たちとのつながりを作りたいと考えています。
「つながり」というのは、一緒に仕事をするということですか?
金井:将来的にはそういうこともあり得るかもしれません。そう考えたときに、事業活動を行う三井グループにとってストレートにつながりやすい分野は「ビジネス」だろう、ということでこの部門を設けさせていただきました。
糠塚:この部門の特徴は、ビジネスだけではなく、社会のために何かをしたいという方にも門戸を開いているという点です。「社会活動」にも重きを置いているのが、他のビジネスコンクールとの違いになってくると思います。
そして「研究・留学部門」ですが、今回16歳以上31歳未満の方という、若い世代を対象にしたオーディションとなりますので、もっと勉強をしたい、研究をしたいなど、中期的な目でチャレンジをしたいと考えている方々も応援したいと思い、設けました。
3つ目の「カルチャー創造部門」に関しては、いかがでしょうか。
金井:人が人間らしく生きるためには、やはり文化的な活動というのも必要不可欠だと思うんです。
三井グループの原点である「三井家」も、江戸時代には、絵師である円山応挙に作品を発注するなど、文化活動の支援を行ってきました。文化的活動を通じて世の中を変えたいと頑張っている人を応援してあげたいという思いから、「カルチャー創造部門」を設けました。
今回のオーディションは「未来の社会のために自らチャレンジする若者」を募っているそうですが、社会のために活動できる人を求められている理由はなんですか?
糠塚:オーディションの告知ムービーでも「自分の挑戦でひとりでも多くの人を幸せにしたいという想いと志(こころざし)」というフレーズを使わせていただきました。「利他性」は今回私たちが重要視している審査基準の一つでもあります。その背景にあるのは現在の社会情勢。いま気候変動や紛争など、世界が深刻なリスクに見舞われていますよね。だからこそ、より良い社会を作りたいと考えられる方々を発掘し、育てることが、ひいては三井グループの社会貢献につながると思うのです。
金井:それに、これは今回審査員となっている方もおっしゃっていたのですが、究極の「利他」は「利己」にも通じます。「人を幸せにしたい」「人のために何かをやりたい」という利他的な考えは、「それをすることが自分自身の幸せにつながるから、成長できるから」という利己心を前提としている場合もあるのです。つまり、強い利他性というのは、ある意味で「自分を成長させたい」という意思の裏返しとも言えるのではないでしょうか。

オーディションの参加者、全員が「チャレンジャーズ」

その他、応募者の方々に期待したいことはありますか。
金井:失敗を恐れない、強い意思を持って活動を続けられるかどうかも、審査で見させていただきたいと思っています。素晴らしい技術やアイデアを持った人は世の中にたくさんいます。しかし、イノベーションに必要なのは、そういった「タレント(才能)」だけではなく、「最後までやり切る力」です。物事は決して計画通りには進みません。自分の確たるビジョンを持った中で、柔軟に軌道修正を繰り返しながらゴールに進んでいける、そんな胆力を持った方に、是非挑戦して欲しいですね。
糠塚:最終審査を通過された方には、初年度に一律500万円の支援金を提供し、その後はご本人の活動状況やニーズに応じて、適宜サポートの内容を変えていく方針です(最長2027年度まで)。そういう支援方法だからこそ、「私はこういうことがしたいから、こんな支援をしてほしい」と明確に言えるようなビジョンや、意思の強さは必要だと思います。
人によって支援の方法を変えるというのは、今回のオーディションの特色でもありますね。
金井:お金で支援してほしいという方もいれば、ネットワークや場を求めている方もいるでしょうしね。また、これはお約束できないのですけど、三井グループ25社の中から個社で「この人を応援したい」と名乗り出てくることがあれば、「三井みらいチャレンジャーズオーディション」の枠組みを超えた支援や、つながりも生まれてくるかもしれません。また、そういう人たちとのつながりは、三井グループにとっても「財産」であると考えています。
最終選考を通過するのは何名の方になりますか?
糠塚:トータルで30名(各部門10名ずつ)、採択したいと考えています。ただ、審査を通過しなかった人も「参加してよかったな」と思えるようなオーディションにはしたいと考えています。例えばエントリー書類にしても、自分の過去・現在・未来を整理していく項目が設けられていて、書いていくうちに自分が考えていることや、やりたいことが言語化されていくような設計となっています。もし今回のオーディションに落ちてしまったとしても、たまたまタイミングが違っただけかもしれませんし、この経験をもって、さらなるチャレンジを続けていただけたら嬉しいです。
金井:自分はこれからどうありたいのだろう?と振り返ることから、挑戦への「第一歩」が始まるんですよね。だから審査の結果に関わらず、オーディションに参加していただいたすべての方々が「チャレンジャーズ」であると、私たちは捉えています。

(まとめ)
人を見極め、育てていくという、三井高利のスピリッツを継承した、今回のオーディション企画。先行きの見えない世の中に、一筋の光を灯すチャレンジを見出し、支援していく。このことこそ、「人の三井」として350年の歴史を歩んできた三井グループならではの「社会貢献」と言えるのかもしれません。

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