三井グループ350周年記念事業紹介レポート知らない三井に出会う
「Meet the MITSUI」
貴重な歴史資料や名品から
三井グループのルーツにせまる
「越後屋開業350年記念特別展」に潜入!
三井グループ350周年記念事業のレポーターに任命された好奇心旺盛な16歳の女子高生「みっこちゃん」。さまざまな不思議や発見を探して、徹底調査。これからどんどんみなさまに三井グループ350周年の記念事業のレポートをお届けします!
今回、みっこちゃんが潜入したのは三井記念美術館で開催中の「越後屋開業350年記念特別展 三井高利と越後屋―三井家創業期の事業と文化―」。
いったいどんなイベントなのか、注目の展示品や見どころなどについて、公益財団法人 三井文庫の下向井さんに教えてもらいました!
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さっそくなんですが、どうして特別展を開くことになったんですか?
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三井グループのルーツで、三井家の元祖とされる三井高利が江戸に呉服店の「越後屋」を開業したのが延宝元(1673)年。今年はその350年の節目にあたるため、創業期から成長期の様子をさまざまな資料や名品、道具類などで紹介していく特別展を開くことになりました。
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店ができて350年なのはわかるんですけど、どうして高利さんが“元祖”?
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高利は今までなかった新しい商売を編み出して、三井家が発展する礎をつくったからです。
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たとえば、どんな新しいことを?
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有名なのが「現銀(金)掛値なし」と「店前売り」です。当時の呉服店では、得意先に直接商品をもっていって販売し、盆・暮や年末にまとめて支払うのが一般的でした。ただ、そのせいで商品の値段が高くなったり、売る相手によって値段が変わったりしたことから、高利は定価制による店頭販売を導入し、現金取引を奨励することで、幅広い客層が買いやすくなりました。ほかにも、当時は常識だった一反単位の取引のほかに、客の需要に応じて切り売りしたり、イージーオーダーのような仕立て売りも行ったことで、越後屋は大繁盛します。
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スゴイ!今でいうイノベーターって感じの人だったんですね。それじゃあ、今回イチオシの展示品は?
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私としてはひとつにしぼりきれないんですが…。
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なら、ふたつでもいいですよ!
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良かった!ひとつめは、三井家を語るうえで絶対に欠かせない、三井家の家法とされる『宗竺遺書』です。
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家法って、その家で守るべきルールみたいな?
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そうですね。高利は亡くなったとき、子どもたちに対していわゆる財産分与するのではなく、共同で運用していくことで、一族が一致協力して事業を発展させていくことを望みました。高利の遺志を受け継いだ長男・高平が、その遺訓をもとに定めたのが『宗竺遺書』です。
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その内容って、今も三井グループで守られているんですか?
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すでに「宗竺遺書」はその役割を終えていますが、精神的な部分で、通じるところもあるかもしれません。たとえば三井をさす言葉として「人の三井」と称されることもありますが、『宗竺遺書』には奉公人を大切にするよう言及している記述もありますので、現代に通じる発想が当時からあったのではないでしょうか。
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へーっ、そうなんですね。じゃあ、もうひとつのイチオシを教えてください!
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『大元方勘定目録』という、三井の決算帳簿です。
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おおもとかた?
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「大元方」というのは、三井家の資本・各店舗・事業を共有財産として統括する持株会社のような存在で、現代でいうホールディングカンパニーの先がけといった感じです。
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それの帳簿がオススメなのはどうして?
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大元方を設置した宝永7(1710)年から明治6(1873)年に至るまで、約160年にわたる経営記録が残っている商家はほとんどないと思いますから、ビジネス資料としてきわめて珍しい存在なんです。
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それでは、今回の展示品のなかでいちばん高いものってなんですか?
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うーん、そうですね…。どれも貴重で値段をつけるのは難しいところなんですが、今では重要文化財に登録されている『唐物肩衝茶入 北野肩衝』という茶道具なんてどうでしょう?「大元方勘定目録」に金1,000両のお金を貸す担保の一つとしてあらわれ、そのまま三井の所有となっています。
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1000両って、今でいうと…。
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1両が何円になるのかは換算の仕方で様々ですが、仮に10万円とすると。
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1億円!
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あくまで担保の一部としての金額ですから、当時、茶道具としての評価額はもっと高かったと思います。ちなみに『北野肩衝』は幕末、今の福井県南西部にあたる若狭国の大名だった酒井家に譲られていますが、大正時代に買い戻されたときの金額は約15万円。当時の給料をもとに現代の価値に換算すると、約6億円になるともいわれます。
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すごく貴重なものが展示されているんですね!
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そもそも『北野肩衝』は、室町幕府8代将軍の足利義政の所蔵品でした。天正15(1587)年に行われた北野大茶会で豊臣秀吉の目に止まり、この名前で呼ばれるようになった、茶道具の中でも最上位にランクされる「大名物」ですから。
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そんなぜいたく品をもってるとか、私の思っていた三井家とイメージ違うなー。さっき見た展示品には、お風呂のお湯をムダにしない方法とか、いろんな節約術が書かれてたから、もっとお金の使い方に厳しいと思ってました。
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みっこちゃんが見たのは、高利が江戸本店の重役にあてた書状の写しを軸にした『宗寿様御筆之軸』ですね。ものを大事にする精神は、その後も三井家に受け継がれていましたが、店が繁盛して資産を蓄えていくなかで、文化面への支出もきわだっていきます。茶道具の収集はその一環で、三井家が豪商として成長していく様子を知っていただくため、ほかにも高利が所持していた「ノンコウ」の通称で知られる樂道入作の『赤楽茶碗』など、貴重な茶道具の数々を展示しています。
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ほかに、実物を見ないとそのスゴさがわからない展示物はありますか?
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写真を見ているだけだとその大きさとか、細かな書き込みの部分がわからないという意味では、伊勢神宮とのつながりを紹介するスペースに展示された『伊勢参詣曼荼羅』ですね。
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確かに、実物はすごくきれいな色づかいだし、絵に描かれている人の姿とか情報量もスゴイ!
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この構図のものは伊勢神宮が所蔵しているものを含めて、3点しか現存していないとされる貴重なものです。
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確かに貴重だけど、直接見てもらいたいのはナゼですか?
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この展示の周辺を見てもらうと、三井家と伊勢神宮の関係を紹介するにあたって『享保二十一年太々神楽執行前後之控』『浮絵伊勢太神宮両所太々御神楽之図』『伊勢太々神楽湯立釜』といったように、史料と美術品、道具類がまとまって展示されているんです。
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つまり文字を読んで、絵を見て、実際に使ったものを一度に見られるってこと?
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そうなんです!今回の特別展のいちばんの特長は、三井文庫所蔵の歴史資料と三井記念美術館が収蔵する美術工芸品を一緒に展示したところにあります。こうした本格的なコラボレーションは三井記念美術館はじまって以来のことで、ほかの展示スペースでもそれを意識した構成になっている部分がありますから、ぜひそこに注目して鑑賞してもらえたらうれしいです。
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アドバイスありがとうございます!ところで、今回展示されているもののほかにも、まだ公開されていない資料ってたくさんあるんですか?
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もちろん、ありますよ。今回の展示は厳選に厳選を重ねたもので、泣く泣く採用されなかったものもたくさんあります。
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三井文庫はどのくらい資料をもってるんですか?
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公称10万点です!
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ということは、今回の展示は10万分の…。
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本当に氷山の一角です。
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では、また次の機会にそのなかから、おもしろい発見ができる展示品が見られることを楽しみにしていますね。今回はありがとうございました!
<越後屋開業350年記念特別展 三井高利と越後屋―三井家創業期の事業と文化―>
- 会期:2023年6月28日(水)〜8月31日(木)
- 開館時間:10:00 〜17:00(入館は16:30 まで)
- 休館日:月曜日(8月14日は開館)
- 主催:公益財団法人三井文庫・三井記念美術館
- 協賛:三井グループ350 周年記念事業実行委員会
- 入館料:一般1,000(800)円/大学・高校生500(400)円/中学生以下無料
- 70歳以上の方は800 円(要証明)。
- 20名様以上の団体の方は( )内割引料金となります。
- リピーター割引:会期中一般券、学生券の半券のご提示で、2 回目以降は( )内割引料金となります。
- 障害者手帳をご呈示いただいた方、およびその介護者1 名は無料です(ミライロID も可)。
- 会場:三井記念美術館 中央区日本橋室町2-1-1 三井本館7F
- 公式サイト:http://www.mitsui-museum.jp/