三井グループ350周年記念事業

三井グループ350周年記念事業紹介レポート知らない三井に出会う
「Meet the MITSUI」

江戸時代から残されてきた
三井家の貴重史料をデジタル化!
10万点の史料を所蔵する
三井文庫の取り組みを調査

三井グループ350周年記念事業のレポーターに任命された好奇心旺盛な16歳の女子高生「みっこちゃん」。さまざまな不思議や発見を探して、徹底調査。みなさまに三井グループ350周年の記念事業のレポートをお届けします!
今回、みっこちゃんが調査をしたのは、記念事業の一環として行われる「三井文庫デジタルアーカイブ事業」。三井家・三井財閥にまつわる膨大な史料をデジタル化して、オンライン公開するという今回の取り組み。その意義とは? そもそも三井文庫ってなに? 気になる疑問を、公益財団法人 三井文庫 研究員の吉田さんと、下向井さんにお聞きしました。

  • わー、史料や本がいっぱいあってすごい! ここが噂の「三井文庫」ですか?
  • ようこそ、みっこちゃん! そうです。ここでは江戸時代、三井家が越後屋だった頃から戦後間もなくまでの期間に収集した、およそ10万点におよぶ史料を所蔵しています。
  • まるで、博物館みたいですね! 例えば、どんな史料があるんですか?
  • 例えば、当時の経営史料があります。
    所蔵している経営史料は大まかに「三井家記録文書(主に近世史料)」と「近代会社史料(明治時代~財閥解体の史料)」の2つに分けられ、近世の史料には会議の議事録などがあります。
  • 江戸時代の会議!?
  • そうです。江戸時代の三井家には大元方(おおもとかた)という、すべての事業を統括する最高機関がありました。そこでは重役人事や各お店の方針について話し合われたり、三井同族に支給するお小遣い、もとい生活費の額が決められたり、さまざまな会議が行われたんです。
  • お小遣いの金額が話し合われていたとは……。
  • あと面白いところでは「聞書(ききがき)」という、当時の三井の従業員が取引先などから聞いたさまざまな情報を書き留めた資料も残っています。震災や飢饉、外国船の騒動など、歴史の教科書にも載っているような有名な事柄もあれば、何々藩の誰々が飲み屋で喧嘩をして刃傷沙汰となったとか、ゴシップ記事のようなネタも載っています。
  • 面白そう! 近代会社史料にはどんなものがあるの?
  • 近代会社史料に含まれるのは、統括会社をはじめとして、戦前三井の主要事業を営む会社や、その傘下会社に関する史料です。企業の意思決定過程が伺えるような史料から、一般社員の辞職表、店舗の服務規定まで、さまざまな史料が残されています。
  • (手に取った史料を開いて)これは何の写真?
  • 鉱山にあった社宅の写真ですね。鉱山って私たちの感覚だと寂しくて、廃墟のようなイメージがあるかもしれませんが(笑)、昔はたくさんの人が働いていて、鉱山を経営する三井が設立した私立小学校がたくさんあるような、非常に活気のある「街」だったんですよ。
  • わぁ、写真で見るとイメージがわきやすいですね!
    それにしても近世の史料は、江戸時代に作られたものなのに、近代の史料と比べてもすごくキレイに残っているのが不思議です。
  • 和紙に墨で書かれた媒体は非常に堅牢なんですが、特に江戸時代の三井の史料は保存状態の良好なものが多くて、江戸時代以来史料を大切にしていたことがうかがえます。また三井家記録文書の一部は、木箱や、帙(ちつ)と呼ばれるケースに収納されています。これらは戦前の三井文庫で一つ一つオーダーメイドで作成したもので、戦前の史料保存の取り組みの一つといえます。
  • 大切に扱われている! やっぱり、こんな古い史料がずっと残されてきたのはすごいなあ。
  • 三井家では、創業者である三井高利の時代から記録を残すということを意識的に行なってきました。史料の作り方や管理の仕方を決めたり、火事が起きた時にどの史料を優先的に運び出すかを決めたり……。三井家の歴史や事業に関する経営史料も、そうやって残されてきたのです。
  • 三井家はなぜ、記録を残すことを大切にしていたの?
  • 三井家に限らず、近世では家の歴史を記録として残すというのが一般的に行われていたんです。また、奉公人が増えたり、店舗が増えたりと、事業がどんどん拡大して混乱が生じた時に、そういった史料を見ることで「高利の時代はこうだったんだ」と原点に立ち返るためにも、記録を残すことは大切でした。
  • 創業者マインドを後世に伝えるためにも、記録は大切なことだったんですね!
  • そうなんです。三井家の事業が安定してきた明治39(1906)年、各家に散逸していた史料を収集・整理して三井家史を編纂しようということになり、三井文庫の前々身となる三井家編纂室が設立されました。その後、震災や空襲で一部の史料が焼失したり、戦後の混乱で所属先が一時なくなってしまったりと、さまざまな困難が立ちはだかりましたが、昭和40(1965)年に財団法人 三井文庫として再建。現在は公益財団に組織変更して事業を続けています。
  • なんか大河ドラマみたい!
  • また、公益財団になったことで、基本的には門外不出だった史料が、一般にも公開されるようになりました。現在、三井文庫では史料の保管だけではなく、学術研究目的での史料閲覧提供や、一部の史料を翻刻(古文書などを活字化して読みやすくすること)して刊行するということも行なっています。
  • 誰でも貴重な史料を見られるようになったんですね! あらためて今回の「三井文庫デジタルアーカイブ事業」は、どういった事業か教えていただけますか?
  • さっき、みっこちゃんにも見ていただいたような三井文庫の史料をデジタル化して、オンラインで広く発信することを目的とする事業です。実は、これまでも毎年少しずつデジタル化は進めていたのですが、時間と労力のかかる作業になるため、すべての史料をデジタル化するにはあと50年から100年はかかるだろうと言われています。今回の事業では、近世、近代を合わせ、一気に史料全体の3割ぐらいをデジタル化する予定です。
  • 道のりは長いですね…。そもそも、なんで史料をデジタル化する必要があるんですか?
  • いい質問です! みっこちゃんは何でだと思いますか?
  • うーん。やっぱり紙の史料って時間が経つと日焼けしちゃったり、破けちゃったりしそうだから、劣化する前にデジタルのデータで残しておこうってこと?
  • 惜しい! それも理由の一つですが、みなさんご存知の通り、デジタルデータというものは紙媒体と違って一瞬で消えてしまいます。また100年後、200年後にPDFやJPEGが変わらずに見られるという保証はありません。残すべきは史料現物であり、デジタル化はあくまで史料をたくさんの人に見てもらうための手段なんです。
  • そっか! 今回の事業が、デジタル化するだけでなくオンラインでの発信がセットになっているのも、史料を見てもらいたいという目的があるからなんですね。
  • そうです。今回デジタル化した画像データは、これまで少しずつデジタル化してきた画像データと組み合わせ、ウェブサイトで順次公開していく予定です。
  • わあ、楽しみ!
  • 今回の三井文庫デジタルアーカイブ事業にはさまざまな意義があると考えています。一つは、歴史研究者の方々にとって今まで以上に史料へのアクセスが容易になるということ。これまで史料を閲覧するためには三井文庫まで足を運んでいただく必要がありましたが、ウェブで公開されることで、世界中どこからでも利用できるようになる。それによって、近世・近代の社会経済史、政治外交史などの歴史研究が一層進むのではないかと思います。
  • 研究者じゃなくても見ていいですか?
  • もちろん!(笑)みっこちゃんのような一般の方にも気軽に史料を見ていただけるようになることも、事業の大きな意義の一つだと思っています。日本人には歴史好きの方も多いですし、三井文庫の史料を通じて、心が動くような体験や楽しみを提供したいですね。
  • 三井文庫の史料は研究者に活用してもらうことで、歴史研究に重要な役割を果たしてきましたが、多くの書籍やテレビ番組に提供することで歴史の教育・普及にも貢献してきました。今回の事業をきっかけにして、三井文庫の史料をより多くの人に知っていただいたり、三井グループの従業員さんと三井文庫のつながりを深めることができたら嬉しいですね。
  • まさに、三井グループの財産ですね!
  • そうですね。さらに、三井文庫を通じて三井の歴史を知っていただくことで、三井グループで働く意味や役割について再確認するきっかけにもなる、そこもまた事業の重要な意義なのではないかと思っています。
  • 最後に、デジタルアーカイブを通じて、未来に残したいことがあれば、教えていただけますか?
  • 歴史史料は、より良い未来を実現するために必要なものだと思っています。史料を見ると過去を知ることができます。過去を知ると何ができるかというと、私たちを取り巻く現在の状況、例えば政治状況、経済状況、社会状況といったものを相対化して見ることができる。そしてなぜ今のような状況になったのか、経緯や原因を知ることで、「ではあるべき未来に向けて今、何をするべきか?」と考えることができるようになる。史料を残すということは、現在の人だけでなく、未来の人が過去を振り返り、考える材料を提供することにもつながるのです。
  • まさに、三井グループ350周年記念事業のキーコンセプト「みついのちからを、みらいのひとに。」にもつながるお話ですね! 今日はいろいろと教えていただきありがとうございました!

みっこちゃんプロフィール

16歳の高校生。いつでも好奇心旺盛で明るくポジティブなのが取り柄。人とおしゃべりするのが大好きで、少しでも気になることがあると、とことん調べずにはいられない性格。たまにまわりが止めるのも気にせず暴走しちゃうことも。